フィールドホッケー選手 永井葉月さん
スピードとパワーみなぎるプレーで見る人を魅了するフィールドホッケー。オリンピックに三大会連続で出場した永井葉月さんは、2020年の東京オリンピック後に一度引退。2024年、現役復帰をしてパリオリンピックに出場しました。現在は、茨城県境町の地域おこし協力隊に就任し、フィールドホッケー選手として活動するほか、その魅力を伝える取り組みにもやりがいを感じています。そんな永井葉月さんが考えるWell-Beingに迫ります。
次の日の疲れを残さないことの大切さ
まだまだ競技人口が少なく、メジャースポーツとは言い難いフィールドホッケー。スティックを使って硬球をシュートする競技で、スケートリンクで行うアイスホッケーと見た目は似ていますが、フィールドホッケーはサッカーよりも少し狭いフィールドで行います。
両親もホッケー選手で、永井さん自身が競技を始めたのは小学3年生のとき。以来、ずっとホッケー一筋で競技に取り組んできました。このスポーツの醍醐味は、ゴールシーンに集約されているといいます。「ホッケーは、かなり激しいスポーツ。運動量もとても多くて、ハード。ゴール付近で選手どうしがぶつかりあう動きや音にも迫力があります。ぜひそこを注目してほしい」
タフさが求められるホッケー選手。激しい試合に耐えうる体を維持するためには「次の日に疲れを残さないことが大切」だと気づいた永井さんは、自身の体の変化に耳を傾け、適切な食事やストレッチを日常に取り入れるように。なかでも、同じくホッケー選手である弟さんの勧めでプラントベースの食事に興味を持ち、取り入れています。
「以前は練習後に『焼肉行きましょう!』と言うほど肉食でした(笑)。でも動物性のものは控えて、プラントベースにしてからは、体力がついて、疲れにくくなったような気がしています。食事から栄養を摂ることがベースですが、どうしても足りない栄養素は、サプリメントやプロテインを取り入れるなど工夫しています。それでも海外遠征などで環境が変わると、お腹の調子が悪くなってしまうことがあって……。そんな時はクロレラのパウダーを混ぜたスムージーをつくって飲むと、お腹の調子が整うのでとても助かっています。パリオリンピックでも毎日欠かさず飲んでいました」
食事が心の穏やかさにも繋がっている
そして試合にあたって大切なのは、万全な状態で臨むこととも。「リオは初めてのオリンピックだったこともあり、『もっとできたことがあったのに』と悔やむ点もありました。東京のときは怪我で思うようなプレーができませんでした。パリでもすべてがベストな状態とは言えなかったかもしれないけれど、試合までのコンディション調整はうまくいきました。やはり体を整えておくことは、試合に挑む前の大きな安心材料となりましたね」と振り返ります。そのパリオリンピックではフランスに白星をあげることができ、永井さんとしても、チームとしても、今後に繋がる意味のある経験となりました。
また体だけではなく、心のコンディションを整えることもスポーツ選手には大切なこと。永井さんは、以前は些細なことにイライラしたりして感情をコントロールする難しさを感じた時期もあったとか。その改善にも、プラントベースの食事が役立っていると永井さん。
「感情のコントロールができないことにずっと悩んでいたのですが、食事をプラントベースに変えて、きちんと栄養のことを考えるようになってからは、心も安定してきたと感じています。周りからも、落ち着いたねと言われるほど。心と体は切っても切り離せないんですね」
継続するコツは“美味しさ”と“手軽さ”
心身ともに、自分に合った食事のスタイルに出合えた永井さん。これを継続するための工夫が、“美味しさ”と“手軽さ”。「いくら体にいいものでも、頑張りすぎてしまうと続かなくなってしまいます。毎朝飲むスムージーは、凍ったバナナに小松菜やゴーヤ、そしてソイミルクもしくはオーツミルク、そしてサン・クロレラAパウダーを入れます。これは味もいいし、栄養バランスが整っている。プロテインなどを追加すれば、朝食はこれだけでばっちりです」
このほか、楽しむという点では、趣味のお菓子作りでもクロレラのパウダーを使用。「マフィンやパウンドケーキをつくるのですが、サン・クロレラAパウダーを入れたりしてます。美味しいうえに栄養がしっかりと摂れるので重宝しています」
自分にあったものを見極め、工夫をすることで、継続できて、より楽しくなる。それはずっと続けてきたフィールドホッケーも、コンディションを整えるために始めたプラントベースの食生活も同じこと。「続けたら続けただけ、結果がついてきますから、また続けたくなりますよね」。モチベーションを保つ秘訣はここにありそうです。
一度は引退も、再び現役へ。フィールドホッケーの認知度アップのための活動も
3大会連続出場という輝かしい経歴を持ちながら、順風満帆の競技人生とは言えなかったと永井さん。2020年の東京オリンピック後に一度引退し、その後2024年に復帰するという経験をしています。
「現役を引退した時は、燃え尽き症候群のような感じでスティックすら握れなくなってしまって……。でも、学校からホッケー教室をしてもらえないかという依頼を何件もいただいて、子どもに教えていると、やっぱりホッケーが好きなんだと自分の気持ちを再確認しました」。それに、引退してからも、所属チームの監督、先輩や仲間、そして家族からも励まされ、再びフィールドに立つ勇気がわいてきたそう。「まだやりたい気持があるのなら、やった方がいいよって。みんなが復帰の後押しをしてくれました」
たくさんの人からの後押しで、ホッケーがしたいという純粋な気持ちに火がついた永井さん。それと同時に以前から感じていたホッケーのすばらしさをもっと多くの人に伝えていきたい気持ちも加速していきました。現在、永井さんは茨城県境町の地域おこし協力隊に就任し、ホッケーの普及に力を尽くしています。
「すばらしい機会をもらって、やりがいを感じています。でもここはまだ出発点。境町での経験を活かして、ホッケーの楽しさや面白さを知ってもらうきっかけ作りを全国に広げていきたいと思っています」。永井さんは、日々SNSで発信するだけでなく、小中学生を対象とした夢に挑戦する大切さを伝える講演活動やホッケー教室、パーソナルコーチングなど、ホッケーへの熱い想いを直接届けることにも注力しています。
まずは「いまを受け止める」。そして「満たされていること」を実感する
自分の体や心に対して正直に向き合ってきた永井さんですが、Well-Beingについてはどう考えているのでしょう?
「とても難しい問いだと思うのですが、自分を満たしてあげることだと思います。そのためには今の自分を受けとめることが大切」と永井さん。「アスリートにとって、食事は一番大切。無理することなく、好きなものを食べて満たされたり、自分でいいと思ったものを体に取り入れたり。そうやって内側が満たされれば、きっと外側にもいい影響を及ぼしますよね」
さらに女性アスリートは、PMSに悩まされたりすることも。永井さんやチームメイトも同じ悩みを抱えています。
「PMSで苦しい時は、無理せず自分の食べたいものを食べ、栄養をとる。小さなことでも積み重ねれば、満たされている実感がわきますよね。誰かの傷みや苦しみを代わってあげることはできないけれど、今の状況を受けとめ、分かち合うことはできると思います」
そしてもう一つ。「自分の好きなことに夢中になることは、とても自分を満たしてくれる」と、永井さんは感じています。一度は引退したホッケー。たくさんの後押しを受けて、再び大好きなホッケー選手として復活し、充実した日々を送る永井さん。選手としてだけでなく、ホッケーの魅力を全国に届けながら、ますます輝きを増しています。